研究室紹介

電気通信大学大学院 情報システム学研究科 多田研究室


多田好克助教授


「顔写真」 ●専門分野
並行処理の記述法,オペレーティング・システム,システム・ソフトウェア

●略歴
1980年 東京大学工学部計数工学科卒業
1982年 東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士課程修了
1985年 同 情報工学専攻博士後期課程修了(工学博士)
1985年 電気通信大学電気通信学部電子情報学科助手
1987年 米AT & Tベル研究所コンサルタント併任
1989年 放送大学非常勤講師併任
1992年 電気通信大学大学院情報システム学研究科情報システム設計学専攻助教授
1996年 早稲田大学理工学部情報学科非常勤講師併任


 


電通大の多田研究室,C言語プログラムの一部をハード化し処理速度を向上

 電気通信大学大学院情報システム学研究科の多田研究室は,逐次処理として記述したC言語プログラムの一部から並行(concurrent)性を抽出し,FPGA上のハードウェアに変換して実行する高速処理の研究に力を入れている。米Sun Microsystems, Inc.のワークステーション「SPARC station5」と,FPGAを3個搭載した独自設計の「Muge-board」でシステムを構成した。これを使って,C言語標準ライブラリをハードウェア化し,処理速度を実測した。その結果,コプロセサの役割を果たすMuge-boardを付加したシステムは,SPARC station5のマイクロプロセサ単体の処理に比べて,アプリケーションの処理速度を向上できたとする。
 このほか,以下の三つの研究を積極的に進めている。それらは,(1)環状のATM(非同期転送モード)ネットワークによる分散共有メモリー,(2)モバイルUNIX端末と固定UNIXマシン間で,ファイルの同一性を維持するためのプロトコル,(3)機能を拡張できるUNIX,である。二つのモノが同時に変化する,並行性を持つ事柄が,同研究室における共通の研究対象になっている。

研究室の特色1

・並行処理の研究は,「逐次処理に比べて考え方が難しいが,処理速度の向上という事例に遭遇できて面白い」(同研究室を率いる多田好克助教授)という。例えば,同じ論理演算を100回繰り返す場合,同じ演算器を4個作って25回の処理で済むように置き換えて処理速度を上げる,という考え方である。

研究室の特色2

・研究においては,「遊び心と好奇心が重要」(多田好克助教授)とする。同研究室では,学生一人ひとりを研究者として対等に扱い,自主性を重んじた育成方針をとっている。再構成可能型計算機「Muge-board」は,その育成方針の成果の一つである。

 

1999年の研究テーマ

1.「Muge-board」を用いた高速処理
・Muge-boardは,1万ゲート相当のFPGAを3個搭載し,SPARC stationの拡張バスであるSBusとのインタフェースを備える。
・頻繁に使う関数をハードウェア化した結果,いくつかのアプリケーションで高速化できた(詳細は,電子情報通信学会,信学技法CPSY98-53,1998年8月,『再構成可能型計算機Muge-boardを用いたシステムの評価』を参照)。さらなる高速化のため,現在,バス・アーキテチャの改良を検討している。
・マイクロプロセサの一次キャッシュの内側に,数万ゲートのFPGAを組み込んだチップや,マイクロプロセサとFPGA間を高速で結ぶインタフェースの登場に,「興味がある」(多田好克助教授)という。
 
「Muge-board」 独自に設計した「Muge-board」

 
2.ATM(非同期転送モード)を利用した分散共有メモリー
・ATMが提供するQoS(quality of service)という品質の概念を,分散共有メモリーに取り入れる。あるしきい値以内で,メモリー・アクセスが完了するシステムの構築を目指している。
・各ノードを環状に接続し,ATMの非同期性によって生じるアクセス競合を,プロトコルによって回避する。現在,シミュレータの実装を行なっている。
 
3.モバイル端末と,固定して使う計算機間でファイルの同一性を維持する研究
・出張や外出に持ち歩くモバイル端末と,研究室の計算機間で,指定したファイルの同一性を維持することを目指す。
・OSはUNIXで,通信回線はPHS(personal handyphone system)の利用を想定している。
 
4.機能を拡張できるUNIX
・メモリー管理,プロセス間通信などを制御するUNIXカーネルについて,動作中の情報収集や,機能拡張を実現する。「UNIXプロセスの可視化によって,OSの動作状態を見られる」(多田好克助教授)点が面白いという。
・UNIXの外部で定期的に走行するスレッドを,動的に追加できる仕組みを構築する。デバイス・ドライバの作成によって,UNIXの通常プロセスとスレッド間で,データの交換を可能にする。

 


研究室の風景


「研究室」  

 
 
 

研究室のメンバー構成

助教授     1名
助手      1名
博士課程    2名
修士課程    9名
学部生     1名

開発環境

開発環境
ワークステーション 30台
論理合成ツール
レイアウトツール


(金 勝教=電子・機械局・第一開発 1999.2.12)
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