研究室紹介
電気通信大学大学院 情報システム学研究科 多田研究室
多田好克助教授![]() 並行処理の記述法,オペレーティング・システム,システム・ソフトウェア
●略歴
電通大の多田研究室,C言語プログラムの一部をハード化し処理速度を向上
電気通信大学大学院情報システム学研究科の多田研究室は,逐次処理として記述したC言語プログラムの一部から並行(concurrent)性を抽出し,FPGA上のハードウェアに変換して実行する高速処理の研究に力を入れている。米Sun Microsystems, Inc.のワークステーション「SPARC station5」と,FPGAを3個搭載した独自設計の「Muge-board」でシステムを構成した。これを使って,C言語標準ライブラリをハードウェア化し,処理速度を実測した。その結果,コプロセサの役割を果たすMuge-boardを付加したシステムは,SPARC station5のマイクロプロセサ単体の処理に比べて,アプリケーションの処理速度を向上できたとする。
研究室の特色1・並行処理の研究は,「逐次処理に比べて考え方が難しいが,処理速度の向上という事例に遭遇できて面白い」(同研究室を率いる多田好克助教授)という。例えば,同じ論理演算を100回繰り返す場合,同じ演算器を4個作って25回の処理で済むように置き換えて処理速度を上げる,という考え方である。
研究室の特色2・研究においては,「遊び心と好奇心が重要」(多田好克助教授)とする。同研究室では,学生一人ひとりを研究者として対等に扱い,自主性を重んじた育成方針をとっている。再構成可能型計算機「Muge-board」は,その育成方針の成果の一つである。
1999年の研究テーマ1.「Muge-board」を用いた高速処理・Muge-boardは,1万ゲート相当のFPGAを3個搭載し,SPARC stationの拡張バスであるSBusとのインタフェースを備える。 ・頻繁に使う関数をハードウェア化した結果,いくつかのアプリケーションで高速化できた(詳細は,電子情報通信学会,信学技法CPSY98-53,1998年8月,『再構成可能型計算機Muge-boardを用いたシステムの評価』を参照)。さらなる高速化のため,現在,バス・アーキテチャの改良を検討している。 ・マイクロプロセサの一次キャッシュの内側に,数万ゲートのFPGAを組み込んだチップや,マイクロプロセサとFPGA間を高速で結ぶインタフェースの登場に,「興味がある」(多田好克助教授)という。 ![]() 2.ATM(非同期転送モード)を利用した分散共有メモリー ・ATMが提供するQoS(quality of service)という品質の概念を,分散共有メモリーに取り入れる。あるしきい値以内で,メモリー・アクセスが完了するシステムの構築を目指している。 ・各ノードを環状に接続し,ATMの非同期性によって生じるアクセス競合を,プロトコルによって回避する。現在,シミュレータの実装を行なっている。 3.モバイル端末と,固定して使う計算機間でファイルの同一性を維持する研究 ・出張や外出に持ち歩くモバイル端末と,研究室の計算機間で,指定したファイルの同一性を維持することを目指す。 ・OSはUNIXで,通信回線はPHS(personal handyphone system)の利用を想定している。 4.機能を拡張できるUNIX ・メモリー管理,プロセス間通信などを制御するUNIXカーネルについて,動作中の情報収集や,機能拡張を実現する。「UNIXプロセスの可視化によって,OSの動作状態を見られる」(多田好克助教授)点が面白いという。 ・UNIXの外部で定期的に走行するスレッドを,動的に追加できる仕組みを構築する。デバイス・ドライバの作成によって,UNIXの通常プロセスとスレッド間で,データの交換を可能にする。
研究室の風景![]()
研究室のメンバー構成助教授 1名助手 1名 博士課程 2名 修士課程 9名 学部生 1名
開発環境開発環境ワークステーション 30台 論理合成ツール レイアウトツール
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