修論タイトル:「ネットワークを利用した組込み計算機向け開発用資源拡張システム」 (2005年度 修士論文)

氏名:明神 智之 <myojin [at-mark] spa.is.uec.ac.jp>

概要:

本研究では、組込み計算機システムの開発、保守環境を対象とした資源提供システムを設計し実現した。このシステムでは、組込み計算機からその上に実装されたデバイスファイルを介して、ネットワークで接続された他の計算機上の資源を利用する。

組込み計算機は一般的な計算機と異なり、特定用途のシステム運用のために設計されている。省スペース、省電力、低コストといった特徴を持ち、様々な場面で用いられている。しかし、組込み計算機は運用に必要な資源しか持たないため、開発や保守のための資源が十分でないという問題がある。もし、開発や保守に十分な資源を持った組込み計算機を使用すると、運用においてオーバスペックになる。この場合、省スペース、省電力、低コストといった特徴を損なってしまう。

本研究の目的は、組込み計算機向けに別の計算機から資源を提供するシステムを構築することである。システムはソフトウェアで提供し、Linux 上で実装する。このシステムは組込み計算機の乏しい資源を考慮し、ハードウェア要求が低くなっている。

本システムの目的を達成するにあたって、次の三つの点に留意した。一つ目は、組込み計算機でも十分に動作しうるように、既存手法より軽量に実装したことである。二つ目は、本システムの使用者の負担をできるだけ軽減したことである。そのために、組込み計算機で動くアプリケーションプログラムに対して、別の計算機の資源を扱うときも、従来のハードウェア資源を扱うのと同等のセマンティクスで利用できるインタフェイスを提供した。三つ目は、既存のOS環境への影響を最小限にしたことである。そのために、本システムはローダブルカーネルモジュールとして実装され、既存 OS を変更しなくとも動的に導入することができる。

本研究では、他の計算機上のディスクを扱うリモートディスク機構と、他の計算機上のキーボード、ビデオを扱うリモートコンソール機構を作成した。本システムのこれらの機構と似た働きをする telnetd や NFS (Network File System) と比較し、組込み計算機に対してハードウェア要求が低いものであることを示した。また、性能面においても十分に代替可能であることを確認した。

本文:

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システム説明:

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