修論タイトル:「イーサネットのみを利用した組込み計算機用カーネル開発システムの設計と実装」 (2006年度 修士論文)

氏名:濱 善幸 hama[at-mark]spa.is.uec.ac.jp

概要:

組込み計算機と呼ばれる、省スペース、低コスト、低スペック な特徴を有する計算機が情報家電や携帯電話など様々な用途に利用されている。 用途拡大に伴い、組込み計算機の行う処理が複雑化してきたため、組込み計算 機上でUnix系OSを動かす場合が増えてきた。 組込み計算機はその利用目的から、タッチパネルやバーコードリーダなど特殊 なデバイスを備えることが多いが、これらのデバイスをOSが制御するため のデバイスドライバの開発に労力が割かれている。

組込み計算機はその省スペース、低コスト性からキーボード入力やビ デオ出力を持たないため、開発対象target計算機用のソフトウェア開発は、 targetとは別の開発用host計算機からの通信を介して行われている。 この通信には従来シリアル端子が用いられてきた。しかし、さらなる省ス ペースや低コストの要求から、実際の製品ではシリアル端子が省かれることが 増えている。そのため製品レベルで不具合が発生した場合にデバッグができな い、という問題が生じてしまう。

そこで本研究では、シリアル端子経由の通信をイーサネットを 経由した通信に置き換えるためのシステムの設計と実装を行った。 具体的には、開発でよく利用されるコンソールとカーネルデバッグ用の通信経 路をシリアルからイーサネットに置き換えた。

イーサネットを対象としたのはネットワークインタフェースとして組込み計算 機でも普及しているためである。通信経路のみを置き換えることで、既存のア プリケーションをそのまま用いることができる。 また、パケット通信を行うことから複数のアプリケーションと同時に通 信が行うことができる、といったメリットも生じる。

本システムの構成要素として設計実装したものは、 hostでは、target上で動作するアプリケーションとhost上で動作するこれら への入出力用アプリケーション間のパケット中継機構である。 targetでは、 デバイスを介して処理を行うコンソールとカーネ ルデバッガで用いられるデバイスドライバと、hostと特殊な 方法でパケット通信を行う機構を動かすための設計実装を行った。

本システムを用いて動作評価を行ったところ、コンソール用アプ リケーションとカーネルデバッガを単独で動作させた場合に限らず、並行動作 させた場合も正しく処理を行うことを確認した。またカーネルデバッグについ てネットワーク周りのデバッグを行えるか実験を行ったところ、特殊なパケッ ト通信を行う機構が処理に関わらない範囲でデバッグ可能であることを確認し た。

本文:

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研究室内部向け情報:

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