修論タイトル:「 既存のプログラミングツールを活用する共同開発環境の設計と実装 」 (2008年度 修士論文)

氏名:山下 剛

概要:

ネットワークを通じて複数の開発者が共同で一つのソフトウェアを開発する共同開発が一般的となった。共同開発の問題として、作業を行なう開発者同士が同じ部屋に居ないため作業の進捗の把握が難しいことが挙げられる。作業の進捗把握のために開発者同士が意識的に連絡をとる必要があり開発者への負担が増加し作業の進行に影響を及ぼす。このため、開発者同士の作業に関する情報の共有が共同開発を円滑に進めるには重要となる。

この開発者同士の作業状況の把握に利用できる情報をAwareness情報と呼ぶ。このAwareness情報を開発者同士で共有するためのシステムとして共同開発支援システムがある。 しかし、既存の共同開発支援システムでは、Awareness情報の提供のために、開発者が利用できるエディタ、バージョン管理システムを指定しているものが多い。既存の共同開発支援システムを導入した場合、開発者はシステム導入のメリットとしてAwareness情報を得ることができる。しかし、デメリットとして、開発者は指定されたエディタ、指定されたバージョン管理システムという、制限された環境での開発を行なうこととなる。 特に少人数の共同開発では、個人の能力を最大限に生かす必要がある。このため、今まで利用してきた開発者の好みのエディタやバージョン管理システムを利用できない既存の共同開発支援システムは導入するためのデメリットが大きくなってしまう。

この問題を解決するため、本研究では、既存のエディタ、バージョン管理システムからAwareness情報を収集する共同開発支援システムCAEDEの設計および実装を行なった。CAEDEは、既存のエディタEmacsと、既存のバージョン管理システムであるCVSを利用して動作する共同開発支援システムである。CAEDEは拡張も容易となっており他のエディタやバージョン管理システムにも対応可能で、開発者が今まで利用してきたエディタ、バージョン管理システムを利用したまま共同開発支援システムの導入が可能である。このため、少人数での共同開発でも個人の能力を損なう事無く導入が可能な共同開発支援システムとなっている。

またCAEDEがネットワークを通じて十分な速度で開発者にAwareness情報を提供する必要がある。そこで、ネットワークで1秒に1回CAEDEが通信を行なうという頻繁に通信が行なわれている状況を擬似的に作り、その状況においても遅延は0.03秒程度とAwareness情報を伝えるために問題なく動作することを確認した。


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