現在,GUI操作の可能なOSが広く普及している.
ここで,GUI操作に最もよく用いられる入力デバイスとしてマウスが挙げられる.
しかし,計算機の操作はGUI操作だけでなく,文字入力操作を含んでいる.
文字入力操作によく用いられる入力デバイスはキーボードである.
つまり,一般に計算機の操作を行う際には,複数の入力デバイスを持ち替えながら作業を行う必要がある.
特にWebブラウザの操作ではこの持ち替えが頻繁に行われる.
フォームへの文字入力にはキーボードが用いられる.
一方リンクやプルダウンといった,Webコンテンツの選択には
マウスによるグラフィクスカーソルの操作が欠かせない.
単一の入力デバイスのみを持ちいれば,この持ち替えの手間は発生しない.
しかし通常キーボードで行っている全ての操作をマウスで行うのは煩雑である.
たとえばソフトウェアキーボードを用いればマウスのみによって文字入力は可能であるが,
文字の入力を行うたびにグラフィクスカーソルを操作し選択する方法では,キーボードで
行う文字入力と比べ,作業に時間がかかる.
そこで本研究はキーボードのみでWebブラウザの操作が行えるような
ユーザインタフェースを実装した.
まずユーザがWebコンテンツに対して行う操作を,
通常その操作に用いる入力デバイスによって大別した.
また通常行われる持ち替えの手間をモデル化し,
それぞれの操作を適宜切り替えながら行うよう,設計した.
通常マウスによるクリック操作は,
クリッカブルなWebコンテンツに対して行われるという仮説を立てた.
またそれらのWebコンテンツの,Webブラウザ上における表示領域の上だけを
グラフィクスカーソルが移動するよう,設計した.
しかしOSが提供するグラフィクスカーソルをキーボードのみで操作するとき,
その振る舞いは得られない.
そこで本研究はWebコンテンツのみを選択の対象とするような
仮想的なグラフィクスカーソルを実装し,それに大してWebコンテンツの選択に特化した振る舞いを持たせた.
GUI操作が可能であり,かつ一般的なWebブラウザの例として,
本研究はMozilla Firefoxを対象とした.
また提案するインタフェースを,その拡張機能として実装した.
数人の被験者に,実装したインタフェースの扱いに慣れてもらった後,
複数のフォームに対して文字入力の操作を行う実験を行った.
マウスとキーボードとを用いる場合と,提案するインタフェースを用いる場合のそれぞれについて,
操作が完了するまでにかかる時間を計測した.
それらの比較により,
提案するインタフェースの有用性と課題とを見出した.