修論タイトル:「実時間性を確保したハイブリッドOSの実装」 (2010年度 修士論文)

氏名:湯山 圭一

概要:

ハイブリッドOS(Hybrid Operating System)の一形態に,RTOS(Real-Time Operating System)の一タスクとしてGPOS(General-Purpose Operating System)を動作させるものがある. このようなハイブリッドOSを使用することで,単一のハードウェア上で実時間性と多機能性を両立できる. しかしながらハイブリッドOSでは,GPOSがRTOSへの遷移を長時間阻害すると実時間性が損なわれるという問題がある. 本研究では,この問題を解決し,実時間性を確保したハイブリッドOSを実装することを目的とする. 実装には,実時間性の確保は行っていないハイブリッドOSを使用する. このハイブリッドOSを改良することで,RTOSの実時間性を確保したハイブリッドOSを実装する.

GPOSの割込み禁止の実装を変更しないでハイブリッドOSを動作させた場合,GPOSは割込み禁止命令をハードウェアに対して実行する. GPOSはハードウェアに対して割込み禁止を行うため,RTOSの割込みも禁止してしまい,RTOSの実時間性が確保できなくなる.

本研究では,実時間性を確保できない要因として,GPOSが行う全割込み禁止と割込みのマスク制御があると考えた. そこで,既存のハイブリッドOSに対し,GPOSが行う全割込み禁止と全割込み許可の仮想化,そして割込みのマスク制御の仮想化を行った. GPOSの全割込み禁止と全割込み許可,そして割込みのマスク制御を置き換え,GPOSの割込み禁止に変わる排他制御をRTOSに実装した. なお,今回は実装の簡単化のため,すべての全割込み禁止と全割込み許可を置き換えることはしなかった.

RTOSと改良前のハイブリッドOS,改良後のハイブリッドOSの三つで評価実験を行い,実時間性の観点から応答性能を比較した. GPOSの全割込み禁止と全割込み許可は,一部仮想化せずに残されているものの,改良したハイブリッドOSでは,GPOSに負荷がかかっていないときにおいてRTOSの実時間性が向上したことが確認できた.


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