修論タイトル:「モバイルデバイス間における省電力を考慮したファイル同期方式」 (2011年度 修士論文)

氏名:高見澤 拓郎

概要:

現在スマートフォンやノートPC等のモバイルデバイスが普及しており, 1人のユーザが複数台所有することも増えている. 複数台のモバイルデバイスを同時に持ち歩き利用する場合,デバイス間でのデータの共有が必要となる. たとえば, 電車の中においてスマートフォンでダウンロードしたコンテンツを, 喫茶店でノートPC で視聴する場合である. また,スマートフォンから閲覧したWebページの履歴やブックマークなどをノートPCからも利用する場合である.

ここでは,モバイルデバイスとしてスマートフォンとノートPCからなる2つのデバイス間の同期について考える. モバイルデバイス間の通信はIEEE 802.11等の無線通信を想定する.ノートPCはバッテリー持続時間が短いため, 未使用時は停止しているものとする. 一方, スマートフォンは通話待ちのため常時起動しているものとする. ユーザがノートPCを起動した後に同期を行った場合, 同期が完了してユーザがデータにアクセスできるまでには待ち時間が生じる. このような待ち時間はサービスの利便性を損ねるため問題となる. 同期に伴う待ち時間を軽減するためには,事前にノートPCを起動し同期を行う方法が考えられる.この場合,ノートPCの起動と停止に伴う消費電力がオーバヘッドとなる. もし更新が起こる度に頻繁に同期を行った場合, ユーザの待ち時間は軽減される半面, 上記のオーバヘッドの蓄積が問題となる. このように,ユーザの待ち時間と消費電力はトレードオフの関係にある.

本研究ではモバイルデバイス間のファイル同期,特に停止デバイスへの同期においてユーザの待ち時間を一定範囲に抑えつつ,消費電力を低減する同期方法を提案する.また,提案法を実現するシステムを設計し,プロトタイプシステムを実装した.実装したシステムを用いて評価を行った. 提案法では, 同期のために行う起動と停止の回数を減らすことで消費電力を削減する.また, 単位時間あたりの更新量により, ノートPCの停止時の電源状態(スリープ状態または休止状態)に基づき,休止モードとスリープモードを切り替えることにより, さらなる省電力化を図っている.実装はスマートフォンの代わりに代替PCを用い,代替PCとノートPC上のアプリケーションとして実現した.停止しているノートPCを起動する方法としてはWake-on-Wireless-LANを想定するが,対応する機種が少ないため,実装では代わりに有線経由のWake-on-LANを用いた.評価は,実装したアルゴリズムに更新のパターンを与えて同期に必要な消費電力を計算することで行った. 結果として.提案法では,消費電力を削減できることが確認でき, バッテリー容量が制限されたモバイルデバイス間で効率的な同期が可能となることを示した.


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