修論タイトル:「スマートフォンを対象にした環境適応型マナーモードの自動設定機能の設計・実装」 (2011年度 修士論文)

氏名:矢嶋 航

概要:

本研究では,マナーモードを環境に応じて自動で高精度に切り替えるシステムを提案する. そのために,まずマナーモードを目的毎に分類した『環境適応型マナーモード』の定義を行う. 次に,この定義したマナーモードを端末の状態に結び付ける.これで,端末の状態から環境適応型マナーモードを判定できる. 端末の状態推定アルゴリズムをスマートフォンに搭載される複数のセンサや近距離通信機能を用いて設計した. また,推定精度を向上させるために,センサの改良と端末間の情報共有を行った多数決の実装も行った.

環境適応型マナーモードを定義するにあたり,利用頻度の高い既存マナーモードから, 各種音量やバイブレータなどの設定の違いを考慮し選定した. 本研究では,「自宅モード」,「睡眠モード」,「職場モード」,「病院モード」, 「公共モード」,「運転モード」,「外出モード」の7項目のモードを定義する. これらの環境適応型マナーモードを端末の状態に対応付ける. 端末の状態に応じて環境適応型マナーモードを自動で切り替える. 端末の状態は,「自宅」,「睡眠」,「職場」,「病院」,「公共施設」,「電車」, 「バス」,「運転」,「外出」の9項目を定義し,以下について述べる方法で端末の状態を推定する.

端末の状態推定を「ロケーション識別」,「シーン推定」,「モーション推定」の3つのアルゴリズムに分けて設計した. 「ロケーション識別」では,Wi-FiとBluetoothの近距離通信を用い,4つの状態「自宅」,「職場」,「病院」, 「公共施設」の識別を行う.「シーン推定」では,時刻と光センサから「睡眠」の推定を行う. 「モーション推定」では,加速度と磁場,ジャイロの3種類のセンサと位置情報を用いて, 4つの状態「電車」,「バス」,「運転」,「外出」の推定を行う.

ロケーション識別,シーン推定,モーション推定の順に処理する事で,推定精度の低いモーション推定の誤推定を減少させる. また,地磁気の理論値を用いて磁場センサを補正する事で周囲の電子機器による推定精度の悪化を減らし, 回転行列を用いて端末の加速度からユーザの加速度に変換する事で任意の端末姿勢でモーション推定が行える様になった. また,Bluetoothのデバイス名を用いた情報共有により推定結果の多数決を行う.実験の結果,関連アプリケーションと比較して, 多数のマナーモードをより精度良く自動で切り替える事ができた.


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