修論タイトル:「モバイルデバイスによる被災者捜索システム」 (2012年度 修士論文)

氏名:永井 智大

概要:

震災等の大規模災害において、被災者救助は最も人的資源と時間を必要とする。各国とも山岳や海洋における被災者救助、および都市部における地震等の大規模災害における救助活動に対し、救助組織を構成している。例えば日本では警察による広域緊急救助部隊、消防による緊急消防援助隊が組織されている。また米国では国防省のFEMA(Federal Emergency Management Agency)が 全米で28の FEMA Urban Search and Rescue Task Force を組織し、倒壊した建物の下敷きになった被災者の救助活動を行う。

 しかし都市における大規模災害では、倒壊した建物の下敷きとなる被災者が同時多発的に発生するため、救助者数が圧倒的に不足する問題が指摘されている。例えば都市圏の直下型地震であった阪神淡路大震災では、15万戸以上の家屋が倒壊したことが知られている。また被災者の生存率は災害発生2日目で大きく低下することが知られており、素早い捜索が必要であるが、救助隊が組織されて被災者の救助に駆けつけるまでに時間を要する。これらより大規模災害時の被災者の素早い捜索が最重要課題となっており、救助隊の人的資源が限られていることから被災者捜索技術が重要となる。

 そこで本研究では人々が日常携帯する携帯電話やスマートフォンなどのモバイルデバイスに被災者捜索機能を搭載することにより、専用機器を用いることなく被災者を捜索するシステムを提案する。提案システムでは被災者の家族など被災地にいて無事ですぐに対応可能な者が捜索を行うことで迅速な対応が可能となる。

 提案システムではネットワーク設備が利用できないことを想定し、ネットワーク設備に依存しない捜索方法として端末自身が発する信号のみで捜索が行える雪崩ビーコンの捜索方式を取り入れる。また被災者は気を失ってしまうことや、がれきや土砂に埋もれてしまい身動きがとれなくなることが考えられる。そこで本研究では被災者の操作は必要としないようモバイルデバイスの機能の適切な切り替え手順を明確にした。

 そして災害時においてはがれきや土砂に埋もれてしまった被災者の持つ端末を充電することは不可能となり、電力設備が機能しなくなる可能性もある。そこで提案システムでは省電力化のために捜索機能を2つのフェーズに分けた。1つ目は被災者端末の存在を発見するための発見フェーズで、2つ目が被災者端末の場所まで捜索者を導くナビゲーションフェーズである。発見フェーズでは通信を間欠的に行うことで省電力化を実現する。


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