若井 英之 <wakai_h@spa.is.uec.ac.jp>
近年普及しているSNS(Social Networking Service)の多くはユーザコンテンツをSNS事業者が一極所持しているため,必要以上の個人情報が集まっており,プライバシーの問題がある.
この問題を解決するため,ソーシャルグラフやユーザコンテンツを複数サーバに分散させる分散SNSが提案されている.たとえばVISはユーザが管理するサーバにデータを保存し,サーバ同士がコンテンツを補完し合って分散SNSを構成する.しかしVISは複数あるサーバの運用がボランティアベースでされているため,サービスの持続性が問題となる.
ところで,インターネット上のサーバを介して複数端末間のコンテンツを同期・共有するオンラインストレージサービスが利用されている.オンラインストレージサービスは,ユーザが利用するストレージ容量に応じて事業者にコストを支払うためサービスの持続性がある.オンラインストレージサービスであるDropboxを利用した分散SNSにFrenzyがある.FrenzyではDropboxで同期したファイルをSNSコンテンツとして扱うことでSNSを実現している.ただしFrenzyではフレンド以外とのコミュニケーションができない.またフレンド関係を定義するために,事前にDropbox上で同期・共有設定が必要である.よって,やりとりできる相手が固定的になり,人の間のコミュニティを広げるというSNSの利点が失われている.
本研究では上記の問題を解決したオンラインストレージを用いた分散SNSを提案する.ユーザがフレンドのフレンドの情報を得るためにSNSとして扱うフォルダ構造を定義した.これによりオンラインストレージサービスで自動的にフレンドのフレンドのコンテンツを共有できる仕組みを実現した.また,SNSからフレンドを追加できるようにするため,フォルダにフレンド関係のセマンティクスを定義し,それに基づき共有設定を行うようオンラインストレージの動作を拡張した.
評価により,提案システムはプライバシー,持続性,つながりの拡張性を備えたSNSであることが示された.
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