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2 Webサービスの現状

1 Webサービス

Webサービスは,標準仕様に基づく分散技術である.

Webサービスでは,単一または複数のプロバイダを標準化された プロトコル(SOAP[2]など)に基づいて組み合わせることで,粗粒度の複 合サービスを合成できる.複合サービスでは,プロバイダとリクエスタを兼ね ることもある.Webサービスの概要を図2.1に示す.

Figure 2.1: Webサービスの概要
\resizebox{15cm}{100mm}{\includegraphics{SimpleWebServices.eps}}

プロバイダは,サービス規約をWeb Services Description Language (WSDL)[3]として公開する.WSDLはXML文 書[4]として記述され,サービスのインタフェース,データ型,呼び出し手続き,バ インドされるプロトコルなどを規定する.

リクエスタはWSDLの情報に基づき,SOAPメッセージをプロバイダに送信してサー ビスを受ける.SOAPはXMLベースのメッセージングプロトコルである.

不特定多数に向けて公開されている既存のサービスを探したい場合は, Universal Description, Discovery, and Integration (UDDI)[5]を使用する. UDDIはWebサービスのレジストリであり,Webサービスの検索を支援する.

その他の特定領域における仕様は,各標準化団体や業界団体で策定が進められて いる.

2 Webサービスの現状

近年,Webサービス技術は企業内システムの相互接続に有用であると注目されている.

企業内システムにおいて, 各部署のシステムをネットワークを介してシームレスに統合することは,部署間 の連携を促し業務の効率化を図る上で重要である.

しかし,既存の企業内システムでは目的に応じて部署ごとに独立したシステムを 構築しており,アーキテクチャの互換性がないケースが多い. このような異なるアーキテクチャで構成されるシステムを相互接続するための技 術,すなわち分散技術は,ネットワークコンピューティングにおける重要な研究 テーマである.

Webサービス以前の分散技術として,代表的なものにCORBAがある[6].CORBAは,異 機種で構成される分散環境におけるメッセージング仕様を標準化したものである. また,CORBAなどの低レイヤ技術をミドルウェアとして実装し,より高レイヤ でのアプリケーション統合を図る概念として,Enterprise Application Integration (EAI) がある[7].

しかし,一般にEAIミドルウェアの仕様はベンダによって異なっており,異なるEAIミド ルウェア間を相互接続することは困難である.このことから,従来の企業内シス テムは単一のEAIアーキテクチャに縛られる傾向にあった.また,EAIミドルウェ ア,およびそれを用いたシステムの構築は,高いコストを要した.

一方,Webサービスは標準技術に基づいているため,単一ベンダの仕様に依存し ない.この特徴は柔軟な相互運用性をもたらすので,既存の資源を多く抱える企 業にとっては大きな魅力である.

また,既に豊富なWebサービス関連の実装が無償または有償で提供されており, 十分に普及している.したがって,実用およびコストの観点から見ても,導 入の障壁は低いと言える.

したがって,今後は新規に構築される企業内システムにおいても,Webサービス 技術を利用する事例が増加するものと思われる.

MITSUBAYASHI Shin 2007-03-14